「日本語独学完全マップ」

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「瞬間日作文」マニュアル

「瞬間日作文」のトレーニングは、簡単に言うと中国語文とそれに対応する日本語の文が書かれている教材を使い、「母国語の文(中国語文)だけを見て瞬時に学習言語の文(日本語文)を作って発音する」というトレーニングです。

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1回のトレーニングでは、短文が10〜30文の量のものを1タスクとして単位とし、全ての短文を「瞬間日作文」(以下、手順説明します)したらこのタスクの1サイクル[i]終了です。1つタスクについて10サイクル行うのが目安です。

以下、トレーニングの具体的な手順ですが、どの教材を使っても基本的には同じです。「日本語独学完全マップ」のTG4では、瞬間日作文のトレーニングに『標準日本語』中級の第1課〜32課の「会話」部分を使いますのでこれを例に説明します。

『標準日本語』には各課の「会話」に15前後の短文があります。以下の「日本語独学完全マップ」本体表の通り、各課の「会話」部分を1つのタスクとします。例えば、第1課「会話」部分の短文を使うトレーニングはタスクD112と呼びます。D112について、10回サイクルを回す必要があります。

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本体表


 

D112(『標準日本語』第1課)には次のような中国語文とそれに対応する日本語の文があります。(『標準日本語』のスマホアプリをご利用いただく必要があります。)

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中級『標準日本語』第1課「会話」部分

「瞬間日作文」タスクの手順(サイクル法)

第1サイクル

それでは、最初のサイクルです。はじめてこのテキストにあたるわけですから、このサイクルではじっくりと4つのstepを踏みます。

step1.まず、中国語文の内容を理解して日作文をします。

ここで気をつけるのは無駄に時間を費やさないと言うことです。決して一つの文に1分も2分も熟考しないで下さい。瞬間日作文は言いたいことを瞬時に日本語にする反射神経を鍛えるトレーニングです。1文につき長くても10〜20秒で切り上げて下さい。

step2.次に文ごとに日本語の文を見て答えあわせをして構造から理解納得してください。

step3.日本語の文を口に落ち着ける作業をします。

理解・納得した日本語の文を、テキストを見ながら何度か音読して下さい。口になじんだら、テキストから目を離し数回唱えます。テキストを見ながらの音読も、テキストから目を離した暗唱も、単なる音にならないように文構造と意味をしっかり感じ、発話実感を込めて日本語の文を再生して下さい。例えば「明日の夜は時間がありますか」の文なら、実際に友達を目の前にして誘う気持ちを込めて言いましょう。外国語の習得には多少の芝居っ気が必要です。

テキストから目を離し、スムーズに2〜3回言えれば次の文に移って下さい。反復回数は当然ながら文の難度によって変化します。難しい文だと、口に落ち着けるためにはそれなりの回数を繰り返さなければならないでしょう。いずれにしても、音読パッケージのように数十回も繰り返す必要はありません。

一般的な日本語の試験では日本語を静止的な知識として扱いますから、理解できたらお終いで、この繰り返しの作業がないがしろにされています。日本語を使いこなすことがゴールでないので無理からぬことです。何を目的にするかによってトレーニングの方法は全く異なってきます。「わかっていること」を「できること」にするためにはわかりきったことを繰り返すことが欠かせません

上のstep1〜3は個々の1つの文について連続して行います。1つ目の文に対して1〜3が終わったら、2つ目の文に行き、このように30文まで終わったら、step4に移ります。

step4.タスク内の短文全ての「日作文の流し」を行います。

「日作文の流し」とは、各項目の仕上げとして30の日本語の文を川が流れるように、なめらかに連続的に再生していくことです。中国語文を見ながら、1〜3のstepで口に落ち着かせた日本語の文が口からすらすらとでるように状態にして下さい。

途中でつまずいて流れを止める文があれば、その文についてはstep3に戻り再び口に落ち着けます。このようにして流れを堰きとめる個所を復習しながら30文すべて終わったら、一文目に戻り同じ要領で「日作文の流し」を行います。このようにすると苦手な文は当然繰り返しの回数が増えますから自然に弱点を補強することになります。

「日作文の流し」を何度か繰り返してすべての文が発話実感を伴ってすらすらといえるようになったらそのサイクルは終わりです。

次のタスクに移って1〜4のstepを繰り返していきます。このようにして、「日本語独学完全マップ」ではPART1〜11の第4段階の全てのタスクを一通り終えたら第2サイクルに移ります。

第2サイクル以降 〜第10サイクル

第2サイクルから後(〜10サイクル)はすべて同じで、第1サイクルのstep4.の「日作文の流し」だけを行います。もちろん流れをせきとめる日本語の文はstep3に戻り口に落ち着ける作業をしながらです。とはいっても、第1サイクルで4つのstepを踏み、特にstep3でしっかり口に落ち着けているので、トレーニングは順調に進むでしょう。

サイクルトレーニングの特長は、サイクル数が増すにつれトレーニングの負荷が減っていくということです。何度も繰り返す、と聞いただけでうんざりとした顔をする人がいますが、実際にはトレーニングはどんどん容易にかつ快適になっていくのです。第1サイクルでは比較的入念なstepを踏みますが、その際の理解・記憶とセグメント分割を利用してそれ以降のサイクルはとんとん拍子にスピードアップしていきます。この第1サイクルでさえ、一回で覚えきろうなどという邪念はありませんので、負荷はゴリゴリ暗記の10分の1以下でしょう

サイクルを回していると、5〜6回目からスムーズに短文が口から出てくるようになりますが、ここですぐにサイクル回しを止めないで下さい。たやすくできることを楽に繰り返すことにより「熟成」が起こり、深い刷り込みが起こるのです。けんかをする場合、相手が降参したらそこで攻撃を止めるのがルールでしょう。しかし、トレーニングでは、相手が無抵抗になっているときにさらに馬乗りになって殴りつけてとどめをさすことが肝心です。淡白にトレーニングを切り上げ捕まえたはずの獲物を取り逃がさないで下さい。サイクルは楽になってからさらに4〜5回回すのが標準です。つまり10回くらいは回すことになります。

第1サイクルは1時間以上かかるかもしれませんが、第2サイクルは1時間以内で収まる程度でがんばりましょう♪

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表2

表2は瞬間日作文の手順のまとめです。このように1つずつすべてのタスクについて合計10サイクルを行いましょう。全てPART1から11のタスクを順番に第1サイクルを行うのではなく、以下のように3つ程度のタスクをまとめて、1サイクルやったら、次の3つへ行き、その後前に戻るなど、少し時間があいたタスクをサイクルで思い出すような形で進めるとよいでしょう。

D020 第1サイクル
D021 第1サイクル
D022 第1サイクル
D023 第1サイクル
D024 第1サイクル
D025 第1サイクル
D020 第2サイクル
D021 第2サイクル
D022 第2サイクル
D023 第2サイクル
D024 第2サイクル
D025 第2サイクル
D026 第1サイクル
D027 第1サイクル
D028 第1サイクル


他の教材でサイクルを回す場合もこのような形で進めましょう♪

※本記事の内容の大部分は、森沢洋介「英語上達完全マップ」の「音読パッケージ」を参考にしておりますが、「英語上達完全マップ」とは一切の関係はございません。日本語学習および当サイトの「日本語独学完全マップ」に位置づけて一部内容を変更して利用させていただいております。

[i] サイクルを回さないと知識が技術として身体に定着しない!森沢洋介氏曰く「学習の中でもトレーニング性の高いものは必ず同一のテキストを何度か繰り返します。これを、サイクルを回すと言います。文法であれ、構文であれ、語彙であれ、日本語を駆使するためには瞬間的に記憶から取り出し(アクセスして)、自由に使いこなせることが必要です。このような反射的で融通性に富んだ知識は、試験勉強のような一回限りのゴリゴリした暗記では獲得することができません。大切なことは軽めに何度も繰り返すということです。これを行うことによって、知識が深く確実に刷り込まれ、使いこなすことのできる技術(スキル)に変化するのです。何度も繰り返すことによって内容を刷り込んでいくのですが、いっぺんにテキスト全体を学習すると、1サイクル終えてテキストのトップに戻ってきた時に記憶が薄れていて、せっかく得たスピードと滑らかさが失われているということが起こります。ですから、ひとつのテキストをいくつかの部分(セグメント)に分割します。セグメントごとにサイクルを回して完成させ、最後にテキスト全体のサイクル回しをすると効果的です。こうすると記憶が薄れる前に次のサイクルが回ってきて刷り込みがどんどん進むのです。」「英語上達完全マップ」より。→「日本語独学完全マップ」ではPART1〜11のタスクのサイクル回しは、満遍なく行いましょう。PART1から11を3つに分け、最初のセグメントを2サイクルやってから、次のセグメントを2サイクルと進め、3つ目のセグメントが終わったらまた最初に戻って2サイクルずつ…というような形がよいでしょう。

 

v1.1 2019/2/28

v1.2 2019/4/22

v1.3 2019/5/22